研究内容

血中安定性が向上したラクトフェリン (LF)製剤の開発

自然免疫で機能するタンパク質であるラクトフェリン (LF) に着目し、その機能解析を進めています。またLFの創薬シーズとしての可能性に着目して、血中安定性が向上したPEG 修飾体 (PEG-LF)、ヒトIgG Fc融合 (hLF-CH2-CH3)、ヒト血清アルブミン融合 (hLF-HSA) 製剤を開発しました。その医薬品化をバイオベンチャー企業と共同で進めています。

・PEGラクトフェリン

サプリメントとして使用されているウシラクトフェリン (bLF)の血中安定性向上を目的として、ポリエチレングリコール(PEG)修飾ウシラクトフェリン(PEG-LF)を開発しました。PEG-LFは血中半減期の大幅な延長、腸管からの吸収向上を示し、動物実験(肝炎や疼痛)で、その増強した薬効が確認されました。


[hinge領域を欠損させたhLF-CH2-CH3の動物実験での効果]

・アルブミン融合hLF (hLF-HSA, HSA-hLF)

血中安定性向上を期待して、アルブミン融合hLF(hLF-HSA、HSA-hLF)をCHO細胞を宿主とする遺伝子組換えタンパク質として作製しました。ラットを用いた実験では、hLF-HSAは血中半減期がrhLFの約3.3倍、AUC値は約3.2倍、HSA-hLFは血中半減期がrhLFの約20.7倍、AUC値は約7.5倍の値を示しました。この生物製剤は、In vitroにおいて、がん細胞に対する増強する細胞毒性を示すが、正常細胞には示さない特徴が明らかとなりました。hLFはNK細胞を介した自然免疫の活性化、樹状細胞を介した獲得免疫活性化により、がん細胞を攻撃する作用が広く知られています。これに加えて、がん細胞に対する毒性の増強に成功したことから、hLF-HSAの抗がん剤としての開発が期待されます。

特許出願中

名称:ラクトフェリン/アルブミン融合タンパク質及びその製造方法

・脊髄損傷などに見られる神経変性に対するLFの効果

脊髄損傷などに見られる神経変性に対して、hLFが有効性を示す事実を新たに見出しました(特許出願中)。この作用は、上記の血中安定性が向上したhLF誘導体でも観察されることから、脊髄損傷治療薬としての開発

・機能性ペプチドの創製と中分子医薬品(Peptibody)の開発

ファージディスプレイランダムペプチドライブラリーからの新規機能ペプチドの創製、進化工学的手法を用いた機能ペプチドの高活性化、さらに機能性ペプチド配列と当研究室で開発した新規Fc融合技術を組み合わせたFc融合ペプチド(Peptibody)の創製を進めています。Fc融合ペプチド(Peptibody)を大腸菌で大量発現させると、不溶性顆粒体として得られますが、可溶化、巻き戻しによる活性型ペプチドの取得は難しいという現実があります。我々は、不溶性顆粒体として得られたFc融合ペプチド(Peptibody)の効率的な可溶化、巻き戻し方法を開発しました。この一連の研究成果に基づいた中分子医薬品(Peptibody)の開発を目指しています。

・ヒトIgG Fc融合ヒトラクトフェリン (hLF)タンパク質

従来のIgG Fc融合技術は、タンパク質医薬品の血中半減期を延長させる方法としてすでに臨床で使用されていますが、intactなFc領域を有している為、Fcγ受容体、補体C1qとの結合を介したエフェクター機能 (ADCC 、CDC)による細胞傷害の可能性があり、副作用として懸念されています。特にLFは多機能性タンパク質であり、多くの分子と相互作用する性質を考えるとその可能性は大きいと考えられます。そこで、CHO細胞を宿主として、Fcγ受容体との結合に必須であるhinge領域を欠損させたhLF-Fc融合タンパク質(以下hLF-CH2-CH3)を作製し、そのLF活性と血中安定性をAspergillus を宿主とする遺伝子組換え型hLF (rhLF)と比較しました。hLF-CH2-CH3はhLFの活性をほぼ完全に保持しており、ラットにおける血中半減期はrhLFの約5.4倍の延長、AUC値はrhLFと比較して約7.4倍の値を示しました。また、intactなFc領域を有するhLFのFc融合(hLF-hinge-CH2-CH3)がADCC活性に関係するFcγ受容体、およびCDC活性に関係する補体C1qとの結合を示したのに対して、hLF-CH2-CH3は結合を示さずエフェクター機能を発現しない事が確認されました。以上より、hLF-CH2-CH3は安全性の高いバイオ医薬品としての期待されます。

1)対象疾患:肝炎

疾患モデル:アセトアミノフェン(APAP)誘導肝炎(急性肝不全)モデルでは、APAP投与後1時間後にhLF-CH2-CH3を投与して効果(GOT、GTP値と、生存率)で効果を確認した。

コンカナンバリンA(Con A)誘発肝炎(自己免疫性)モデルでは、Con A投与後、90分後にhLF-CH2-CH3を投与して効果(GOT、GTP値と、生存率)を確認

2)対象疾患:敗血症(敗血症性ショック)

疾患モデル:盲腸結紮穿刺(CLP)敗血症モデルで、CLP施術90分後にhLF-CH2-CH3を投与して効果(生存率)を確認した。

3)対象疾患:rhLf-Fcのモルヒネ鎮痛活性増強効果

疾患モデル:テスト30分前にモルヒネを投与しておき、浸透圧ポンプでhLF-CH2-CH3を持続投与。Tail-flick testで鎮痛効果を評価した。増強効果を確認した。

4)対象疾患:オキサリプラチン末梢神経障害に対するrhLF-Fcの鎮痛効果

疾患モデル:Von Frey test(0,2,4,7,9,11,14,16,18,21,23,25,28,30日)で評価し、鎮痛効果を確認した。

Recombinant human lactoferrin-Fc fusion with an improved plasma half-life.

Shiga Y, et al., Eur J Pharm Sci. 67, 136-143, 2015

Hinge-Deficient IgG1 Fc Fusion: Application to Human Lactoferrin.

Shiga Y, et al., Mol Pharm. 14, 3025-3035, 2017

特許

名称:ラクトフェリン融合タンパク質及びその製造方法

特許第5855239号、特許第6356115号、USP 9,809,641、EP2842969、

中国特許 (第2946938号)

PCT/JP2013/062685 カナダ、韓国、インド、ブラジル審査中